遠くから聞こえていた声

正法眼蔵荘

2015年03月28日 19:05

今回の記事は画像はありません。文章のみのブログです。


昔の話ですが、迷い犬を保護したことがあります。保健所に連絡し、一旦は当犬舎で預かり返事を待っていました。どういうことかと言いますと、保健所が保護し里親募集が出来そうな犬か殺処分するか検討をする訳です。

決して難しい話ではありません。保健所と自治体が取り組んで行っている「里親会」では、それなりの若さや大きさ、飼い易さなどを基準に保護している犬の飼い主を募集しなくては貰い手がみつからなくなります。そんな折に近所に住んでいる老夫婦と畑で会いました。犬を保護している話をしましたら「ウチで飼ってもいいよ。」と仰るので、直ぐに保健所に連絡し後は直接やりとりをして貰い、そのご夫婦が犬を飼うことになりました。

その後、その犬と飼い主さんが朝散歩をしている姿をよく拝見しました。その犬は朝ご飯の時に遠吠えをする癖があり、当犬舎にもその声は届いていました。そんな日がしばらく続き、迷い犬でありながらも大事にされて幸せなことだなぁと思っていました。
ところが、昨年の秋くらいから散歩に出会うことがなくなり、ご夫婦の畑も手が入らなくなって来ました。体調でも崩したのか?と思いつつ、当犬舎は知らん顔をしていました。

今年に入って毎朝聞こえる遠吠えも聞こえなくなり、気になったのでご夫婦の家の前を通ってみました。すると、入り口に犬小屋が置いてありましたが犬はおりませんでした。。。ご主人の軽トラックもありません。家の様子も手が入ってないように感じました。

私は卑怯者です。「どうかした?」と、声を掛けないのです。何故ならば家の事情で犬を飼えなくなったとして、「じゃあお宅で何とかして!」と言われることが嫌だったのです。つい先日ご近所の方から聞いた話では、ご主人が入院されて奥さんだけで生活しており不自由が多いそうだとのことでした。多分、犬も他所に貰われたのではないかと言っていました。

迷い犬を保護した理由も当犬舎のまわりをうろつくからです。しかも、犬を飼っているくせに「迷い犬」は飼えないから他人に押し付けたようなものです。そんな当犬舎にとやかく言う権利はありません。迷い犬がどうなったか心配するくらいなら当犬舎で飼えばいいことなのです。それが出来ないのに、飼い主さんに「どうしたの?」と聞ける訳がありません。
ただ、毎朝聞こえた遠吠えが聞こえなくなって自分が嫌な人間に思えることがありますが、同時に飼い犬を山に捨てる人がいることが原因だと思うともっと嫌な人間もいるんだなあと言い聞かせております。





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